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日々あったことを徒然なるままに
続くで四回目

こちらは「なろう」にアップした物の目次
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 二人が遊んでいる間、フィアドの身に何が起こったのか、レノムスは当然実際に見ていない。聞いた話や噂、後で書類を調べた結果分かったことをまとめると、あらかたこんな感じらしい。
 街についたフィアドは、野菜を乗せた荷車を押し、教会に向かっていた。そこで、何か物音か、悲鳴のような物を聞き付けたのだろう。道端に置きっぱなしになっていた荷車から、急いでその場にむかったのだろうと見当がついた。
 その先で彼が見たのは、見知らぬ男が女性を痛めつけている光景だった。長い髪をつかまれ、何度も頬を殴りつけられていたのは、昼間レノムス達が話していたあの泥棒。
 これも後から分かったことだが、彼女はリーザという名前だった。彼女はその夜、罪が暴かれるのを恐れ、治療院を逃げ出していたのだ。そこで運悪く仲間と鉢合わせしてしまったというわけ。
 リーザに盗みに入る館の情報を与える代わりに獲物の山分けを約束していたという男は、彼女が手ぶらなので、獲物を独り占めされたと思ったに違いない。拷問して隠されている自分の取り分をいただくつもりだったのだろう。現にその女は服のツギハギに似せた隠しポケットに宝石を隠していた。
 リーザを痛め付けていた男は、フィアドを見てあっさりと逃げ出した。きっと、結局いくらになるか分からない盗品のために、大の男とやりあって捕まるリスクを冒すのは割に合わないと思ったのだろう。後には、体中にあざを浮かべて立つこともできなくなったリーザが残された。
 それからフィアドがとった行動を想像するのは簡単だ。幸いそこは魔法禁止区域ではない。フィアドは女性を横たわらせ、回復魔法を唱えたに違いない。
 フィアドは知らなかった。女のツギに小さな宝石が隠されていたことを。その宝石に古(いにしえ)の魔法が施されていたことも。
 その宝石にかけられていた魔法がなんなのか、今ではもう分からない。盗んだ者への呪いだったのか、あるいはもともとは宝飾品ではなく何かの武器の一部だったのか。間違いなく言えるのは、永い時間の中で、その術式がほころびていた事だ。
 赤ん坊の夜泣に目をさまし、たまたま窓からその様子を見ていたという母親の証言によると、フィアドが回復魔法を唱え終わった直後、宝石が真っ赤に輝いたという。その母親がよくみれば、沸き上がった赤い魔術文字が、連なり、絡み合い、女性の全身をマユのように包み込んでいるのが分かったはずだ。
 明らかに回復魔法をかけた時の現象ではない。フィアドは恐怖を覚えたかも知れない。彼はその時、劣化した宝石の術式に、自分の回復魔法の魔力が刺激を与えてしまった事には気づいただろうか。ちょうどヒビの入ったガラスを強く弾いたように。
 女性を包む赤い魔力は、膨れ上がり、暴発した。

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